中東・アンバールハイヴ3
ブリギッテ
「残り数分で主縦坑の底だな。
最深部まで2000kmの縦穴か。
戻れるのか不安になるが」
ブリギッテ
「大尉、一ついいですか。本当に
ウォードッグ中隊を後方支援に
回して良かったのですか?」
『誰』
「龍浪中尉は仲間がどんな状態に
あっても戦意を失わない強さが
あると信じて疑わないが――」
『誰』
「危険な場所で救出が難航している
部下を置いていけるほど冷酷には
なれないさ」
『誰』
「誰かが助けなきゃいけないなら、
中尉にやらせた方がいい。
神宮司少佐もそう考えたんだ」
ブリギッテ
「なるほど。しかし僭越ながら
この局面でその判断はいささか
少佐も甘いと思えてしまいます」
ジークリンデ
「あら?少佐は甘くないわよ、
ベスターナッハ中尉。代わりに
私達を引っ張り出してきたもの」
ジークリンデ
「冷静に考えれば、この方がむしろ
戦力的には充実しています。適切な
差配だったと思いますよ」
ジークリンデ
「であればこそ、アイヒベルガー
少佐も賛同したのでしょう。
…さて、それよりも」
ブリギッテ
「着地予想地点に多数の敵影!
盛大なお出迎えが待っている
ようですね」
ジークリンデ
「まるで巣を突かれて凶暴化した
毒蜂の群れね。害虫は駆除して
あげましょうか、大尉」
『誰』
「了解!各機、着地予想点の
BETAを殲滅する!!」
ジークリンデ
「主縦坑、最下層を確保」
アイヒベルガー
「後続、続け」
『誰』
「あれだけいたBETAを、こんな
短時間で平らげてしまうなんて。
さすがのおふたりだ…」
ジークリンデ
「ご謙遜でしょう。大尉こそ鬼神の
如き奮戦だったではありませんか」
アイヒベルガー
「大尉のくぐり抜けてきた死線は
常に極限だった。己の力量には
胸を張っていい」
アイヒベルガー
「大広間まではあと僅かだ。
ついてこい、『誰』大尉。
新たな死線を共に越えるぞ」
『誰』
「了解!」