エジプト・カイロ基地周辺1
――エジプト・カイロ基地
ツェルベルス大隊、欧州派遣部隊、
そして『誰』は、一端カイロ
基地へと後退していた。その後…
ツェルベルス大隊と欧州派遣部隊は
休息もそこそこに、別任のため基地
を離れたのであった。
篁唯依
「『誰』大尉!
ご無事で何よりでした!」
『誰』
「篁中尉久しぶりだな。また共に
戦えると聞いて心強いよ。病み
上がりで悪いが頑張ってくれ」
崔亦菲
「ちょっと大尉、私もいるんです
けど~~」
『誰』
「分かってるよ、崔中尉。
中尉もまたよろしく」
篁唯依
「それより大尉、外をご覧になり
ましたか?シャトル発射場に
HSSTが搬入されています」
崔亦菲
「しかもあれだけの数…。きっと
軌道降下するつもりなんですよ。
でも一体誰が、どこに…」
『誰』
「薄々感づいてはいただろ?勿論
俺と君達だ。あれは俺が香月司令に
進言したものなんだ」
篁唯依
「私達が…?どういう事かお聞き
してもよろしいですか?」
『誰』
「後ほどブリーフィングでな。
今は連携の再確認を兼ねて、
BETAの迎撃を行う」
崔亦菲
「そうね、アンバールハイヴが
堕ちたせいか、最近野良BETAが
多くて。一石二鳥ね」
篁唯依
「うん。では『誰』大尉、
参りましょう。久しぶりの連携、
腕が鳴ります」
『誰』
「…以上の事から、香月司令は
オリジナルハイヴへの再突入を決断
し、その任務を我々が拝命した」
篁唯依
「大尉の脳裏に突然浮かんだ、世界
融合の原因と思しきビジョン…
ですか」
『誰』
「そうだ。俺は単なる思いつきとは
思えない。記憶は曖昧だけど、多分
真実なんだと思ったんだ」
『誰』
「俺達はこれまでに、何度も世界を
移動するという不思議な経験を
重ねてきただろう?」
『誰』
「そしてその時の記憶は今でも鮮明
に残っている。だが、そんな経験は
俺達だけのものだろうか?」
崔亦菲
「別世界に住む私達も同じような
経験をしている可能性は十分に
あるわよね」
篁唯依
「つまり大尉は、別世界の自分の
記憶が他の世界の自分と共有されて
いると言いたいのですね?」
『誰』
「ああ。香月司令も夢の一部は共有
された記憶である可能性を指摘して
いる。そして今回は――」
『誰』
「オリジナルハイヴが再活性化して
いるという観測結果もあり、俺の
言葉が決断を後押しした…」
篁唯依
「それにしても冒険よね。その仮説
だけで今の疲弊した人類を喀什に
再突入させようってんだから」
『誰』
「あの人は元来物理学者だ。司令の
提唱する因果律量子論は、世界の
現状と完全に合致するらしいぞ」
崔亦菲
「ふうん…私には正直難しい話ね。
でも単なる思いつきでないのなら
いいわ。無駄死には嫌だもの」
篁唯依
「念のための確認ですが…。
桜花作戦は間違いなく成功した…
んですよね?」
『誰』
「ああ、それは間違いない。
常識的に考えれば、再活性化は
あり得ない」
篁唯依
「委細承知しました。その大役、
必ずまっとうして見せます」
崔亦菲
「そうね、腕が鳴るわ」
『誰』
「決行日等の詳細は決まり次第伝達
する。それまで俺達は野良BETA
の掃討だ」
『誰』
「HSSTに万が一の事が起きない
よう、心して任務にあたってくれ」
「「了解!!」」